保坂和志『もうひとつの季節』
『季節の記憶』の続編で登場人物はほぼ同じ。ただ、近所に引っ越してきたなっちゃん親子がほとんど姿を見せない代わりに、猫の茶々丸が加わっている。新聞に連載していたので、いかにも新聞らしい挿絵がついている。
大人になることは言葉の世界を自分のまわりに築き上げていくことで、それによって世界をわかった気になることができるし、実際子供の頃よりはわかっているのだろうけど、世界と直に触れるのではなく言葉を介して触れることしかできなくなってしまう。ところが、ふとしたきっかけ、たとえば赤ん坊の頃猫と一緒に写っている写真をみつけたとか、高校時代の同級生の女の子が同じくらいの年頃の娘を連れて現われとか、で言葉の外側の世界が垣間見える。ラカンの言葉でいうと現実界だろうか。ううん、相変わらず哲学的だ。
でもやっぱり猫は可愛い。
★★