坂本多加雄『国家学のすすめ』

国家が共同幻想であることを認めながらも、国家というものが人々の心の中に「実在」する不可欠なものだということを説こうとしている本。主に、この本の中で「国家相対化論」、「反国家フェティシズム」と呼んでいる考え方（あまりレベルが高くなく設定されている）に対しての反論という形で書かれている。

対立する論調に言及する論理の展開は一見公平だが、現状や歴史が分析なしに絶対視されたりとか、アイデンティティが重層的なものだと認めながらも国民や民族のアイデンティティをえこひいきしたりして、結論としては「国家絶対化論」、「国家フェティシズム」になってしまっている。特に、後半の日本の歴史（特に近代史）を振り返りながら日本という国家について考える部分ではそれが顕著だ。

この本の内容に反論していくことは実はかなり難しい作業だと思う。ある意味乗り越えなければならない壁のようなものだ。

★