西崎憲編訳『短編小説日和 英国異色傑作選』
英国の小説家20人の短編小説を一編ずつ集めたアンソロジー。掲載順に名前と生没年を列挙すると、ミュリエル・スパーク(1918-2006)、マーティン・アームストロング(1882-1974)、W.F.ハーヴィー(1885-1937)、キャサリン・マンスフィールド(1888-1923)、H.E.ベイツ(1905-1974)、グレアム・グリーン(1904-1991)、ジェラルド・カーシュ(1911-1968)、マージョリー・ボウエン(1886-1952)、T.F.ポウイス(1875-1953)、エリザベス・グージ(1900-1984)、ヴァーノン・リー(1856-1935)、F.アンスティー(1856-1934)、L.P.ハートリー(1895-1972)、ニュージェント・バーカー(1888-1955)、ナイジェル・ニール(1922-2006)、チャールズ・ディケンズ(1812-1870)、M.P.シール(1865-1947)、ロバート・エイクマン(1914-1981)、ジーン・リース(1890-1979)、アンナ・カヴァン(1901-1968)。比較的女性が多いのと、著名な人は少ないのが気がつくところだ。幻想的な作品が多いのは別にわざとではなく、もともと短編小説というジャンルは超自然的な題材を扱うところからはじまったと巻末に収録された短編小説に関する論考に書いてあった。日常的な題材が扱われるようになったのはチェーホフの影響が大きいらしい。
印象に残ったのは、マンスフィールドの『パール・ボタンはどんなふうにさらわれたか』。女の子が、見知らぬ女性たちに連れられて、家から海までいく話。夢の中みたいな現実感のなさが心地いい。マンスフィールドはずっと昔に読んだ気がするけど、これを機会にもう一度読んでみたくなった。もうひとつはボウエンの『看板描きと水晶の魚』。美して奇妙な復讐譚。