R. A. ラファティ(伊藤典夫、浅倉 久志訳)『昔には帰れない』
『九百人のお祖母さん』に続いて同じハヤカワから刊行されているはずの『つぎの岩につづく』を読もうと思っていたが、どこの本屋にも見あたらずいつの間にか絶版になっていたらしい。がっかりしているところにこの短編集が出た。『九百人のお祖母さん』は初期作品がメインで、通俗的な作品が多いという感想を持ちそうになったが、この短編集を読んでそう思う人はだれもいないだろう。特に二部にわかれているうちの後半の収録作品はちょっとこじれた作品を集めたというだけあってきわだってマニアックだ。同じSFでもイーガンなどハードSFの論理的思考とは対極のオカルト的な思考をつきつめた作品が多い。
一番好きなのは、第二部の冒頭に収録されている、多様な奇妙な種族が入り乱れて暮らすある星での死の受容を描いた『忘れた偽足』という作品だ。とてもユーモラスで切実で静かな世界。
★★