高エネルギー加速器研究機構素粒子原子核研究所編『宇宙と物質の起源 「見えない世界」を理解する』ebook

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あちこちで聞きかじったあやふやな知識を整理しておこうと読み始めた。

量子場というのは計算の便宜を図るものくらいに考えていたら実は本質的なもので、今まで粒子だいや波だと言っていた素粒子の実体はこの量子場の励起状態と考えたほうがいいらしい。素粒子の種類ごとにこの場が宇宙全体に広がっていてそこにエネルギーが与えられて励起するとそれが粒子や波として観測されるというのだ。その中でもヒッグス場というのは重要な役割を担っていて、本来が質量がない他の素粒子の場と相互作用して運動を妨げ質量を生み出しているのだという。

宇宙の始まりはビッグバンというのは有名だけど、ビッグバンは有名だけど実はその前にインフレーションという宇宙が加速的に膨張する現象が(おそらく複数回)起きていたという説が有力らしい。

宇宙の終わりについても、理論的には、現在のヒッグス場の真空状態が真の真空ではなくさらに低いエネルギー状態へと遷移し莫大なエネルギーが放出されてすべてが一瞬に焼き尽くされる真空崩壊と言う現象が起きる可能性が否定できないそうだ。ヒッグス粒子とトップクォークの質量の非常に微妙なバランスに依存しているとのことで今の精度だと起きるとも起きないとも断定できないらしい。もし宇宙のどこか一点で発生すると光速で周囲に広がってついには全体を覆い尽くすとのこと。なんだかそういう終わり方はあっさりして気持ちいい感じがしてしまった。

その可能性の有無はさておき、その数値が微妙な範囲にあったりすることを、マルチバースと人間原理から説明する向きもあるようだ。つまり、パラメータが異なる宇宙がたくさんあってその中から持続して人間のような物理学の探究が可能な生物が生まれた宇宙だからこそ、そういう絶妙なパラメータになっているということだ。

ひとつおもしろいと思ったのは登場する人名にすべて「博士」をつけていること。最近の人物ならわかるけどアインシュタインやニュートンもアインシュタイン博士、ニュートン博士になっている。複数の執筆者がみんなそう書いているのでレギュレーションなのだろう。英語では必ず敬称の “Dr.” をつけると思うのでそっちが自然なのかもしれない。

★★★