劉慈欣(大森望、ワンチャイ、光吉さくら、泊功訳)『三体Ⅲ 死神永生』
三体三部作の完結編読み終えた。間違いなくオールタイムベストに入る作品だ。
本作の主人公は程心という女性。彼女は運命の巡り合わせで、前作で明らかになった黒暗森林という宇宙の弱肉強食の現実の中で人類の生き残りを賭けた選択を何度も担うことになる。その度に彼女は、自らの頼る原理である愛と平和に基づいた選択をするのだけど、常に裏目にでて、後悔に苛まれることになる。最終的に彼女は人類を越えて宇宙の未来に関する選択もすることになるのだけど、そのときもぶれることはない。
物語の完成度も高いけど、それ以上にSFのアイディアがすばらしい。もうSFというジャンルには新しい驚きはないような気がしていたけどそんなことはなかった。まさか、次元というシンプルで使い古された要素をこんなふうに活用するとは!
全編とにかく圧巻だった。今年は芝居も本もそんなに読めなかったけど、三体三部作のうちに作を読破しただけでも大きな達成だ。
最後に本書のテーマが如実に表現されている一文を引用して終わりにする。
あらゆる知的生命の究極の運命は、つねに、その思考と同じくらい大きなものになることだったのである。
★★★★