劉慈欣(大森望、立原透耶、上原かおり、泊功訳)『三体II 黒暗森林』
『三体』の続編。前作で異星文明との接触を果たした人類は同時に侵略の危機にさらされる。侵略者である三体艦隊は400年後に地球に到着する予定なので、余裕があるようにみえるが、「智子」という11次元空間に展開された陽子コンピュータにより、すべての人類の活動は監視され、テクノロジーの進歩は阻害されるようになった。本編では、そんな事態がはじまってから3年目〜213年目の出来事が描かれる。
この状況を打開するため、人類は面壁者という人間を4人選定する。智子といえども人間の思考は読み取れないので、面壁者はそれぞれ、他の人間に対して真意を隠したまま対策を進めていく。基本的に面壁者に選ばれたのは高名な学者、政治家、軍人だが、ひとりだけまったく業績のない無名の男羅輯が本人のあずかり知らないところで選ばれる。彼が本編のメインの主人公だ。
SF的なアイディアやギミックは前作の方が多めに感じられたが、人物の奥行きや物語の広がりは本編の方が上回っている。
いったん、小康状態という感じで終わったが、むろんそのまま続くわけはない。完結編を読むのが楽しみでもあり、ちょっと怖くもある。いずれにせよ、そろそろ邦訳が発売されてもいいころだ。