山尾悠子『歪み真珠』
15編からなる掌編集。『夢の遠近法』を読んだのも実はこの文庫の発売がきっかけで、なんかびびっと直感に訴えかけるものがあり、まず初期作品から読もうと思ったのだった。で、ようやくそもそものきっかけの本書に手を伸ばした。
以下は収録作のリスト。
- ゴルゴンゾーラ大王あるいは草の冠
- 美神の通過
- 娼婦たち、人魚でいっぱいの海 - 娼婦たちが棲む寓意と謎に満ちた島。どこか処女作『夢の棲む街』を彷彿とさせる
- 美しい背中のアタランテ
- マスクとベルガマスク - 見分けのつかない男女の2人の双子が物語を疾走していき唐突に終止する
- 聖アントワーヌの憂鬱
- 水源地まで - 山尾作品は西洋の神話的な背景の硬質な感触の作品が多いが、日本のどこか架空の都市を舞台にしたこれは例外的に柔らかなタッチの作品。そういえば京都を舞台にした、『夢の遠近法』所収の『月蝕』にも同じ柔らかさを感じた。
- 向日性について - カルヴィーノ『見えない都市』にでてきそうな町の話
- ドロテアの首と銀の皿 - 冬眠する種族を描いた連作長編『ラビスラズリ』の後日談。『ラビスラズリ』はもともと読むつもりだったが前倒しする
- 影盗みの話 - 特殊能力をもつが鑑をみると気絶するという特性をもった人々と彼らについて書かれた書物の話
- 火の発見 - 円筒状の世界を描いた『夢の遠近法』所収『遠近法』と同じ世界の話
- アンヌンツィアツィオーネ
- 夜の宮殿の観光、女王との謁見つき - 夜の宮殿シリーズその1。こちらは書き下ろしなので書かれた順序は後のはず。 悪夢の中のような浮遊感が心地いい。
- 夜の宮殿と輝くまひるの塔 - 夜の宮殿シリーズその2。先に書かれただけあってこちらのほうがオーソドックス
- 紫禁城の後宮で、ひとりの女が
★★★