高橋源一郎『日本文学盛衰史』ebook

日本文学盛衰史 (講談社文庫)

6月にみた舞台の原作。舞台版は4人の文学者の弔いの場面から構成されていたけど、原作では41編の連作短編の中で明治の文学者たちが自由にいろいろな場所を動き回っている。そして寄せては返す波のように同じ人物やテーマが違う角度から何度も繰り返される。時に時空をこえ(石川啄木はブルセラショップの店長になり田山花袋はアダルトビデオの監督になる。夏目漱石は森鴎外にたまごっちの入手方法をきく)、この作品が雑誌に連載された1997年から2000年にかけての町に現れたり、風俗が紛れ込んだりする(明治ではなくそっちに「時代」を感じてしまうのがおもしろい)。

分量としては石川啄木がメインのパートが多いが、夏目漱石も印象深い。著者の高橋源一郎自身の病気と夏目漱石の病気が重なりあうし、『三四郎』が二葉亭四迷と語る。そして、夏目漱石『こころ』の謎解きをした『WHAT IS K』が興味深い。

★★