円城塔『Self-Reference ENGINE』

Self-Reference ENGINE (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

その瞬間、宇宙は無数の宇宙に分裂し、時間や因果律が錯綜して頭の中の弾丸が銃の中に戻ろうとしたり、家の中に別の家が生えてきたりするようになった。その出来事は「イベント」と呼ばれている。それぞれの宇宙の出来事は巨大知性体という何台ものコンピュータの演算によって起きるようになっている。そもそも、「イベント」は巨大知性体が、自然現象を利用して演算を行おうとした結果引き起こされたのだ。

イベントをめぐって巨大知性体と人間とその他のものが織りなす20の小さな物語。笑い、パラドックス、叙情、多様な各物語は他の物語と幾何学的な関係で結ばれている。それは数学的に美しい。

複写されてから一定時間が経過すると消えてしまう文書のエピソードがあるのだが、それをなぞるように、半分くらい読んだところで、この本がどこかに消えてしまった。泣く泣く買い直したが、今度はなんとか消える前に読み終えることができた。