円城塔『エピローグ』

同時刊行された『プロローグ』と『エピローグ』、ふつうなら『プロローグ』を先に読むが、円城塔作品なら逆だろう、とこっちから読むことにした。 ...

円城塔『バナナ剥きには最適の日々』

Kindleの半額セールに飛びついた。タイトルから思った通り円城塔版ナイン・ストーリーズ。あ、でも10編入っているなと思ったら最後の『コルタサル・パス』は文庫版に追加収録された作品だそうだ。 ...

金子邦彦『カオスの紡ぐ夢の中で』

借り物。著者は複雑系の研究者だ。読み始める前は、カオス理論や複雑系の一般向けの啓蒙書だと思い込んでいて、貸してくれた人の意図もわからず、長らく放置状態になっていた。読むにしろ読まないにしろ返せる機会にいったん返しておいた方がいいんじゃないかと思いたち、それなら読んだ方がいいだろうという消極的な動機で読み始めたのだった。 ...

円城塔『道化師の蝶』

芥川賞受賞の表題作と『松の枝の記』の2編が収録されている。 『道化師の蝶』は、奇妙な文様の蝶、それをとらえるための特殊な網、ほとんどの時間を飛行機の中で過ごし乗客の着想をとらえてビジネスの種にしている実業家、友幸友幸という数十もの多言語で作品を書き続ける正体不明の小説家、友幸友幸を追い求めて調査することで稼ぎを得ている男などから編み上げた緻密なタペストリーのような作品。同じシーンが変奏のように微妙に姿を変えて登場し、因果と時間は循環する。 ...

チャールズ・ユウ(円城塔訳)『SF的な宇宙で安全に暮らすっていうこと』

円城塔が訳すんだからふつうのSFではあるまいと思ったとおり、全然ふつうじゃなかった。 作者チャールズ・ユウ自身が主人公。彼はタイムマシンの修理をして生計をたてている。タイムマシンの研究者だった父親は何年も前に失踪して行方不明、母親は介護施設で日曜日の夕食どきの一時間のループの中で暮らしている。彼自身はふだん、平穏な時空の片隅で、非実在犬エドと愛機のタイムマシンTM-31付属のAIタミーを友にしてすごしている。彼らがいるのはMU(Minor Universe)31(ちなみにこの31という共通の数字はこの物語の中での彼の年齢からきていると思われる)という物理法則が93%しかインストールされていない小さな宇宙で、おそらくぼくらの宇宙とはパラレルな宇宙だ。だから単純な原理(人間の意識による)で動くタイムマシンが発明されているんだろう。 ...

円城塔『これはペンです』

何かどこかの手違いでここまで目を通してしまい、憤っている人がいたとするなら、その誤配を謝りたい。最初から自分宛の手紙ではないとわかっただろうと思うわけだが。その場合、できればこの手記を必要としていそうな人物へと転送していただければ幸いだ。 ...

円城塔『後藤さんのこと』

世の中に自分がわからないことがあるのを認めたくない質だ。もちろん、わからないものの方が圧倒的多数ではあるわけだが、ちゃんと時間をかけてがんばれば片鱗くらいはつかめるんだぞというポジションを確保しておきたい。もちろん、それはいつでも可能というわけじゃなく、頭がちゃんと働いている時間を選ばなくてはいけない。だから、起きがけで頭が朦朧としている朝の通勤時とか、仕事で消耗している帰宅時の電車の中とかは、最悪なコンディションなわけだ。 ...

円城塔『オブ・ザ・ベースボール』

ファウルズという町ではほぼ年に一度人が空から落ちてくる。主人公は彼らを救出するためのレスキュー隊員のひとりで、どういうわけか支給されているユニフォームを身につけ、バットをもち、日々訓練にはげんでいる。といっても高速で落ちてくる人にバット一本で何ができるわけでもなく、今まで救出できた試しは一度もない。なぜ人が落ちてくるのかもたくさんの説が唱えられているものの結局のところまったくわからない。 ...

円城塔『Boy's Surface』

4編からなる短編集。 円城塔は2冊目だが、作風を非常におおざっぱにたとえさせてもらうと、グレッグ・イーガンと高橋源一郎とルイス・キャロル(とあと小説家じゃないけどダグラス・ホフスタッターの名前もあげておこうか)を足しあわせたものを、レフラー球からのぞき込んで変換したという感じだろうか。レフラー球がなんなのかは、表題作の “Boy’s Surface” を参照。 ...

円城塔『Self-Reference ENGINE』

その瞬間、宇宙は無数の宇宙に分裂し、時間や因果律が錯綜して頭の中の弾丸が銃の中に戻ろうとしたり、家の中に別の家が生えてきたりするようになった。その出来事は「イベント」と呼ばれている。それぞれの宇宙の出来事は巨大知性体という何台ものコンピュータの演算によって起きるようになっている。そもそも、「イベント」は巨大知性体が、自然現象を利用して演算を行おうとした結果引き起こされたのだ。 ...