ダグラス・アダムス(安原和見訳)『ほとんど無害』

ほとんど無害

『銀河ヒッチハイクガイド』のシリーズもいよいよ最終巻。なぜ全五作からなる三部作といわれるか、その理由がわかった気がする。シリーズの特長ともいえる切れ味の鋭いギャグは前作よりさらに影をひそめ、諦観や一種宗教的なさとり、センチメンタリズムが表面に躍り出ている。といってもラストをのぞいては特に悲惨な事件が起きるわけではないのだが、全体のトーンがやりきれなさに満ちているのだ。もっとも、それが必ずしも悪いわけではない。ギャグよりすばらしいやりきれなさもあるだろう。ところが本書のやりきれなさは、どこか俗っぽいし、ただやりきれないだけだった。

タイムリーな話題をひとつ。本書には発見されたばかりの第十惑星が登場する。1992年に書かれた本なので、もちろん架空のエピソードだ。名前はペルセポネ(別名ルパート)だ。実際に第十惑星になるかもしれなかった、冥王星の外側で見つかった2003 UB313という天体に、つい最近名前がつけられたそうだ。その名はエリス。ペルセポネでなければルパートでもなかった。

さて、もうひとつ気がついたこと。占星術によると、ルパートに陣取っているグレビュロンのリーダーの「最悪の時期」は一ヶ月間続くことになっている。ということは、一ヶ月後にその最悪の時期を終わらせるようなあることが起きるということだ。それが何かは本書では触れられていない。いや、さらに気が滅入るようなできごとかもしれないが。