村上春樹編訳『バースデイ・ストーリーズ』
アメリカを中心とした英語圏の作家の、誕生日に関する短編小説を集めたアンソロジー。すべて村上春樹が訳している。
今この時期に誕生日に関する本を読むことはぼくにとってとてもタイムリーなことなのだ。この本には子供から老人までさまざまな年齢の人物の誕生日が描かれているが、年齢が高くなればなるほど誕生日はほろにがくなる。いまぼくはその苦味をとても深く理解できる。
最後には村上春樹オリジナルの誕生日に関する短編が収められている。二十歳の誕生日をアルバイト先で迎えた女の子が受けとるちょっと奇妙なプレゼントにまつわる物語だ。村上春樹のベストの部類には入らないが、不思議な後味がある作品だった。舞台をかえれば翻訳作品としても通用しそうだ。このあたりに日本の小説家のなかでは例外的に村上春樹が世界中で読まれている理由があるような気がする。
さて、誕生日には、いずれにせよ人は何かを得て何かを失うのだろう。そういうものなのだ。