ダグラス・アダムス(安原和見訳)『銀河ヒッチハイク・ガイド』

銀河ヒッチハイク・ガイド

銀河バイパス建設のために地球が破壊されてたった一人生き残ったときに是非とも必要になる本。それが『銀河ヒッチハイク・ガイド』だ。表紙には大きな読みやすい文字でそういうときにうってつけの言葉―「パニクるな」と書かれている。

20年以上前に読んでなんていかした小説なんだと思ってから長らく記憶の底に沈んでいた。ぼくの記憶だけでなく訳書の方も廃刊になって中古本市場の奥深くに沈んでいたが、映画公開とともに、新訳が別の出版社から発売されたのだ。久しぶりに読んでみて、感傷をまじえないストレートなブラックユーモアが新鮮に感じた。なにせいきなり地球をまるごとふっとばして数十億人の人間を抹殺してしまうのだから。でも、それで眉をひそめる人間より、自分が笑いながら地球破壊のボタンを押すところを想像できる人間のほうが健全だ。

本題からはずれるけど、銀河系大統領という職務について書かれたところは、どこかの国の指導者を彷彿とさせて笑ってしまった。

大統領に要求される資質は指導力ではなく、計算ずくでちゃらんぽらんをやる能力である。だからこそ、選ばれるのは決まってなんであんなやつがと言われる人物であり、人を逆上させると同時に魅きつけもする人物なのだ。大統領の仕事は権力をふるうことではなく、権力から人の目をそらすことだ。

あと、Google電卓でanswer to life the universe and everythingを計算すると42になるのはこの小説からきている。さて、答えはわかったものの、問題はいったいなんだろう?それは『銀河ヒッチハイク・ガイド』にも載っていない。