夏目漱石『虞美人草』

夏目漱石の代表作のひとつなのにその存在を忘れていた。朝夢現のときにテレビで内容を紹介していて読もうと思ったのだった。 漱石が教師を辞めて朝日新聞社に入社し作家専業になって書いた最初の作品だ。漢文がベースの流麗な表現がちりばめられていて美しさを感じるものの、現代人(ぼくのことだ)にと...

夏目漱石『行人』

この劇の元ネタということで、ひさしぶりに再読。劇は小説から弟が兄の妻と同じ室に一泊するというシチュエーションを借りているだけで全く別物のつもりで見ていたが、あらためて小説を読むとセリフや人物設定など思ったより引用されているのだった。 この時代の小説を読むといつも意外に感じるのが生活...

夏目漱石『草枕』

山路を登りながら、こう考えた。 智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角にこの世は住みにくい。 という冒頭部分は、「棹さす」の意味が正反対に誤解されている(正しくは流れに乗るという意味)という話題を含めて、有名すぎるほど有名だが最後まで読み通した人はたぶんそ...

夏目漱石『私の個人主義』

漱石が満州で行った幻の講演の内容が明らかになったというニュースが耳新しい今日この頃、ではまずとうの昔に発見済みの講演を読んでみようと思った。 収録されている講演は5編。最後の『私の個人主義』は1914年すなわち漱石の死の2年前に学習院の学生向けに行われた講演、そのほかは1910年に...

夏目漱石『吾輩は猫である』

ラストで猫が死ぬ話はやだなと思ってずっと避けてきたのだけど、考えてみればラストで人が死ぬ話は数多く読んできたし、この間などはラストに犬が死ぬ話までも読んでしまった。猫だけ特別扱いするのも理に適わないので、このあたりで目を通しておくことにした。 猫は単なる狂言回しでほんとうの主人公は...

夏目漱石『それから』

宮藤官九郎脚本の昼ドラ「吾輩は主婦である」にすっかりはまってしまい、久しぶりに夏目漱石の小説が読みたくなった。一時期青空文庫でまとめて作品を読んだことがあったが、この『それから』はその当時まだ収録されておらず、未読だったのだ。 主人公の代助は今でいうところのニート(マスコミやネット...