『ここまできたのははじめてだ』 by e.e. カミングス
もうひとつ続いてカミングス。言葉の使い方がほんとうに美しいとしかいいようがないので、以前から挑戦しようと思っていた。恋愛をテーマにした詩ということになっているのでぼくにうまく訳せるとはとても思えないが、やれるだけやってみた。
カミングスが二番目の妻になるアン・バートンに対する恋情を謳ったものということだが、そのマゾヒズムを通り越して宗教的といっていいような自己放棄の姿勢がすごい。聴覚と視覚が混じり合うような共感覚的な描写、“intense fragility” という弱さが強さに転化するような矛盾をはらんだ表現など、言葉のスペクタクルが繰り広げられている。
なお、カミングスとアン・バートンは3年の結婚生活の後離婚している。
ここまできたのははじめてだ これまで経験したことがないくらい楽しい、あなたの瞳には静けさがある あなたのかすかなしぐさでぼくは何かに閉じ込められる それは近くにありすぎて触れることができない あなたがちらりとみただけで私はやすやすと花開く それまで指のように固く閉じていたのに あなたは一枚一枚花びらを開いていく、まるで春が (巧みな謎めいた触れ方で)最初のバラを開くように あなたが閉じろと願えば、 私と私の人生はとても美しくそして突然に終わるだろう 雪が注意しながらあらゆる場所に落ちるところを 花の心が思い描いたときみたいに この世界で知覚できるもので、あなたの強烈なか弱さの力にかなうものはない その手触りはその国の色で私を染め上げ、 一息ごとに死の色と永遠の色が移り変わる (あなたの中の何が花を開かせたり閉じさせたりするのかわからない ただ私の一部だけが理解している あなたの瞳の声はすべてのバラをあわせたより深いということを) どんなものも、雨さえも、そんな小さな手をもっていない
japanese translation of <a href"http://www.poets.org/viewmedia.php/prmMID/15401">somewhere i have never travelled,gladly beyond