プリセタ『サイクロン』

作:倉持裕、演出:世田谷ジェッツ/OFF・OFFシアター/自由席3000円/2004-07-18 19:30/★★

出演:戸田昌宏、谷川昭一郎、関優勝、富士タクヤ、倉持裕、(声:季美善)

成功した俳優が取材の準備のため下積み時代を過ごした海沿いの安アパートをたずねる。だが彼はその場所の記憶をほとんどなくしていることに気がつく。おまけに壁には妙なスピーカーがとりつけられていて、ときおり女性の声で「サイクロンが近づいています」というアナウンスが入る……。

倉持裕の戯曲の特徴は不条理なシチュエーションで、それが最後に解決することもあるし、不条理なまま観客に投げ出されることもある。岸田戯曲賞をとった『ワンマンショー』では不条理ならではの論理で見事に整合性がとられていたけど、それ以降は投げ出すパターンばかりだった。今回はうってかわって日常世界の論理で整合性がとられている。わかりやすくて楽しい芝居だったけど、ちょっと物足りなさが残る。特に、真相が明らかになったあと、わざわざ野口がもどってきて、それを確認させる必要はなかったのではないかと思う。そのままなら阿部の存在が想像力の中で大きく広がることができたのに、確認されたことによって卑小な存在に戻ってしまった。