劇団青年座『あゆみ』

Act 3D

様々な役者グループとともに何度も上演されて、早くも古典といっていいんじゃないかと思える作品だが、ぼくは初見。今年創設60周年を迎える新劇界の老舗青年座とのコラボ上演だ。

人間の歩くという行為にスポットライトをあて、ある平凡な女性の一生をおいかける。牧歌的で幸福な子供時代、上京と就職、恋、結婚、出産、親の死、娘の結婚、自らの老い……と切れ目のない円環のように世代が繰り返される。これを多数の俳優たちがかわりばんこに舞台上を歩き回りながら演じていく。

よくも悪くも柴幸男の描くテーマは作品をまたいで共通している。主人公たちはよい家族に恵まれ、平凡ながら幸福だ。故郷と家庭はあたかも楽園のような懐かしさと輝きに満ちている。作者そして観客は、その輝きをもはや失われた過去のものとして慈しみながらみる。この作品はそういう一連の作品の中でも原点的な作品らしく、構成がとてもシンプルだ。そのシンプルさがじわじわと静かな感動につながるさすがとてもよくできた作品だ。

青年座の俳優陣は年齢の幅が広いのがとてもよかったと思う。演技の質感もいつもみている小劇場系の演劇とかなり違う。特に、こういう完全にある役に入り込むのではなく、一部に素の俳優自身が残っているかのような演技を要求される場合にその違いが気になるのかもしれない。その違和感を含めて興味深い上演だった。

作・演出:柴幸男/青年座劇場/指定席4200円/2014-07-20 18:00/★★★

出演:阪上和子、野沢由香里、土屋美穂子、松乃薫、藤井佳代子、椿真由美、柳下季里、小暮智美、安藤瞳、坂寄奈津伎、山口晃、石井淳、和田裕太