青山演劇カウンシルファイナル『赤鬼』

赤鬼

みたことのない野田秀樹の名作戯曲をこれまたみたことのない新進気鋭の演出家の演出でという一石二鳥がまんまとあたった。

ある孤島に外国人の男が流れ着く。島の人間たちは彼を「赤鬼」と呼んで恐れ迫害する。そんな中、母親がよそ者だったため島の人間から「あの女」と呼ばれる女が、「赤鬼」と近づき、言葉が通じるようになっていく。そこにからむ、みんなから「足りない」といわれている女の兄とんび、そして幼い頃から島の外の世界を夢みて嘘つきよばわりされてきた男水銀。

表面的なヒューマニズムに留まらず、人間とは何かという根源的な問、外の世界への希望と絶望を描いたすばらしい作品だった。

みていて野田地図の大人数によるアンサンブルが脳裏に浮かんだが、もとから主要人物4人の少人数のための作品だったようだ。赤鬼役の小野寺さんが小柄で赤鬼という感じでは全然ないのがおもしろかった。また彼による振付が効果的で、笑いをうみだしたり、動作が特別な意味をもったりして、今回の演出の肝になっていた。

あと黒木華さんはすっかり主演がはれる魅力的な役者になっていた。

青山円形劇場での観劇は今度こそほんとうに最後。思い出深い劇場だった。

作:野田秀樹、演出:中屋敷法仁/青山円形劇場/指定席6500円/2014-06-07 13:00/★★★★

出演:黒木華、柄本時生、玉置玲央、小野寺修二、竹内英明、傳川光留、寺内淳志