マームとジプシー『ドコカ遠クノ、ソレヨリ向コウ 或いは、泡ニナル、風景』
劇場がある場所も含めて何の予備知識もなく初マープとジプシー。
今までみてきたいくつかの劇団の芝居が頭にオーバーラップする。音楽の有機的な使い方はままごとの『わが星』だし、身体を酷使するする動きがあるところは東京デスロック?(一度しかみてないのであやふや)、役者がある役を演じていうセリフと物語の外から物語を説明していうセリフが混在するところと、不思議な振りつきで発話するところはチェルフィッチュに似ている。
そういう先行する劇団の要素をとりいれつつ、同じシーンを間をおいて位置関係をかえて何度も繰り返すことにより、音楽的な高揚感をうむ手法は独特。
物語の方はといえば、日常的な瞬間が本来持っているはずの一回限りの祝祭性を、日常が途切れるエピソードを設定して浮かび上がらせる。でもそのエピソードはきわめて日常的な想像力にささえられていて、逆にリアリティーをはぎとられているし、そこから生まれる感傷も説明を要しないシンプルなものだ。アート系演劇の先行世代がこういうシンプルさからいかに離れるかを競っていたことを考えると、ままごともそういう面があるけど、シンプルな感情をそのまま装飾せずに舞台におくというのは、若い世代の特徴といってもいいかもしれない。
劇場は桜美林大学のキャンバスの中。調べてみたら劇場名のプルナスというのはサクラ属の学名だった。桜美林の「桜」からとったのだろう。
作・演出:藤田貴大/PRUNUS HALL/自由席2000円/2012-06-23 18:00/★★
出演:伊野香織、石井亮介、荻原綾、尾野島慎太朗。斎藤章子、高山玲子、成田亜佑美、波佐谷聡、召田実子、吉田聡子