パルコ・プロデュース『欲望という名の電車』
作:テネシー・ウィリアムズ(訳:小田島恒志)、演出:松尾スズキ/パルコ劇場/指定席7700円/2011-04-16 19:00/★★
出演:秋山菜津子、池内博之、鈴木砂羽、オクイシュージ、猫背椿、村杉蝉之介、顔田顔彦、河井克夫、小林麻子、桔川友嘉、井上尚
原作戯曲はやはり名作。この主人公ブランチは女優だったら誰しも演じたい役だろうな。秋山菜津子は見事に演じきっていた。
ブランチ自身の存在感、魅力というのもあるのだけど、物語としては、同居する妹の夫スタンリーとの確執、争いが主軸で、そういう点では、ブランチを執拗に追い詰めて破滅させるスタンリーという人間をどれだけリアルにかつ魅力的に描けるかが、演出の成否を握っていると思う。スタンリー役の池内博之は男臭さ、野獣性、計算高さなどの役作りは完璧だけど、なんか別の意外な要素をいれるともっとおもしろくなった気がする。表面的には、スタンリーは妻のステラとの共依存的な生活を妨害するブランチをうとましく思ったから彼女を追い詰めるんだけど、でもそれだけでは説明できない狂気のような執念を感じるのだ。
ひとつには、没落した南部の地主と、移民の子孫の工場労働者という階級的な闘争という側面があって、実際そういう文脈で戯曲は書かれたのだろうが(初演から数年後の映画化では『風と共に去りぬ』のヴィヴィアン・リーがブランチを演じている)、現代の日本ではちょっとリアリティーをそこに感じるのは難しい。ぼくは、感覚的な世界に生きるスタンリーと想像的な世界に生きるブランチという感じで、二つの世界の争いをそこに読み込んだ。スタンリーは自分と違う世界に生きるブランチに本能的な危機感を覚えたのかもしれない。そういう解釈もありかなと思った。