日本語を読むその3『ポンコツ車と五人の紳士』

日本語を読むその3『ポンコツ車と五人の紳士』

作:別役実、演出:柴幸男/シアタートラム/自由席1000円/2010-05-08 19:00/★★

出演:粕谷吉洋、福士惠二、玉置孝匡、谷川昭一朗、ベンガル、平田暁子(ト書き、演出助手)

初めてのリーディング公演。そう、戯曲を舞台で上演するには、通常の演劇という形態のほかにリーディングという形態があるのだった。違いは、①舞台装置と衣装がないこと(といってももちろん全裸とかではない)②役者は基本的に舞台を動きまわらず静止したままで、台本を手に持って読むこと③ト書きが声に出して読まれること。衣装と舞台装置の費用が不要なだけでなく、稽古時間が短く済むことから、かなり安上がりに公演を実現できて、それがチケット代金にも反映されている。だが、劇作家自身が演出するなら問題ないが、今回のように既製の戯曲を演出するのは、できることが限られてしまうので、かなり難しそうだ。戯曲に書かれたことを再現する最後の1マイルが観客の想像力に委ねられてしまうのだ。

ポンコツ車のまわりに集まる、シルクハット、ステッキ、メガネと同じ風体の紳士5人(なぜかシルクハットとステッキは用意されているけど役者は誰も身につけていない)。ナンセンスコメディーなので彼らのちぐはぐな会話に大笑いさせられるんだけど、彼らがおかれた世界はかなり悲惨な状況だ。周囲にポンコツ車以外に目印になるものはなにもなく、方向もわからない。時刻は意味をなくしていて、昼なのか夜なのかもわからない。時間の経過もあやふや。新たな製品は生産されてない(だから臭い靴をはいていたり、いつのものかわからない新聞紙をもっていたりする)。人のアイデンティティは失われている。自分以外の人間を区別することができない。いわば世界が終わった後の世界。

今回ベテラン、中堅の役者が中心だったけど、基本的に声だけなのに、さすが、かなり存在感のある演技をしていた。通常の演劇より、うまさがよくわかるような気がした。