『ザ・ダイバー』日本バージョン

『ザ・ダイバー』日本バージョン

作・演出:野田秀樹/東京芸術劇場小ホール1/指定席6500円/2009-08-22 19:00/★★★★

出演:大竹しのぶ、渡辺いっけい、北村有起哉、野田秀樹

一年近く前にロンドンで活躍する俳優たち+野田秀樹により英語、日本語字幕付きで上演されたロンドンバージョンをみていたが、なんだかんだぼくの拙い英語力だと字幕に頼るしかなく、その字幕もかなりのんびりとした大意を要約するような感じのものだったので、ディテイルをちゃんと味わうことができたか心許なかった。そうでなくても、現代と古典の間をいききする日本が舞台の物語で、日本人の名前をもつ役を、イギリス人の俳優が英語で演じることに、むずがゆさのようなものを感じなかったといえば嘘になる。ということで、機会があれば日本語でみておきたかった。あとなんといっても大竹しのぶの演技を間近で見たかった。

ロンドンバージョンで主役のユミを演じた Kathryn Hunter の身体表現能力はすごいと思ったけど、やっぱり大竹しのぶに日本語で語りかけられると、もっと直接的に心が動かされる。鳥肌がたつほどぞくぞくするシーンがあった。

あと、ラストシーンで大きな気づきがあった。ここは海底が舞台で無言で演じられるので、言葉が原因だったわけじゃないのだが、前回は、幻想的で美しいなと思っている間によくわからないまま終わってしまった。今回は……いや、はずかしいことに最終的には500円で買ったパンフレットに掲載されていた大江健三郎と野田秀樹の対談で、はっきりとその意味を知ったのだった(ぼくは昔から画像から意味を読み取ることが苦手で、漫画をあまり読まないのもそのせいだ)。実はそこがわからないと、海底に沈んだ宝物をとりかえす海人のエピソードが物語の流れから浮いたままで、『ザ・ダイバー』(=海人)というタイトルがついた理由すらピンとこなくなってしまう。非常に重要なミッシングリンクだったのだ。おそまきながら、ようやくこの作品を理解できた気がする。