ヌトミック『彼方の島たちの話』

彼方の島たちの話

2度目のヌトミツク。生者と死者の関係性がテーマなのは前作と共通している。ここでは死者は生者とわ同じく姿を表し言葉を交わす。崖から海に飛び降りて自死した人とその残された家族という3組のペアが登場する。最初、自死をとめられず罪の意識を感じる遺族と死者がわかりあえてお互い癒されるというありきたりな話なのかと思ったが、この作品のメッセージはもっと尖っている。

登場人物に自死してくれてよかったと語らせ、残されたものが罪の意識を感じるという物語の束縛から逃れようとする。それでも、死者はそこにいて言葉を囁き続けるけど、その言葉を生者が耳を傾ける必要はないのだ。それによって死者もまた解放されるのではないか。

音楽劇というくくりでバンドの生演奏付きだが、音楽が果たす役割が独特だ。単なるBGMではなく役者と一体になって言葉とそれに付帯する状況を表現しようとしている。今回字幕付きで、セリフに加えて演奏の意図までちゃんと見ようと思えば見られる状態だった(実際はセリフに集中していて難しい)。

見終わった後いろいろ考えさせられる作品はちょっと久しぶりだ。見てる間だけ楽しくて終幕と同時に忘れる作品もいいけど、演劇の醍醐味は見終わった後に残るもやもやだということを再認識した。

作・演出・音楽:額田大志/シアタートラム/早割4500円/2025-11-22 18:00/★★★

出演:稲継美保、片桐はいり、金沢青児、東野良平、長沼航、原田つむぎ、(音楽)細井徳太郎、石垣陽菜、渡健人