イキウメ『ずれる』

イキウメのメンバーのみによる、男5人だけの芝居。
親の事業を引き継ぎ社長を務める輝は、問題行動を繰り返す弟・春に手を焼いている。春は入院していた施設から戻ってくると、佐久間という男とともに何やら怪しげな計画を企てていた。輝が秘書兼家政夫として雇った山鳥は、被災して避難所暮らしをしていた整体師を家に連れてくる。その整体師には、幽体を離脱させたり戻したりする不思議な力があった。彼には、幽体離脱した春の姿も見えている。
そんな折、町には大量の野生動物が押し寄せ、暴れ回り始める……。
冒頭の兄弟のシーンから物語は始まる。全編を通して会話は洒脱で、実におもしろかった。やはり演劇というメディアでは、ストーリーは添え物であり、むしろ会話や各シーンに詰め込まれた要素こそが主役なのだ。ただし、会話に重みと深みを与えるには、登場人物を立体的に描き出すストーリーの力が不可欠である。今回は、どの人物にもどこか感情移入しきれない部分があったものの、それでも十分に物語に引き込まれた。
作・演出:前川知大/シアタアートラム/指定席7500円/2025-05-17 18:00/★★★
出演:浜田信也、安井順平、盛隆二、森下創、大窪人衛