ヌトミック『何時までも果てしなく続く冒険』

終点 まさゆめ

初ヌトミック。4年ぶりの新作長編とのこと。生演奏の音楽が全面に出るところが特長でまさに音楽劇だ。基本モノローグで進行するので最初はチェルフィッチュの音楽特化版かと思った。でも社会批評性はないし、語られるストーリーはそこまで整理されてなくて荒削りな状態だ。 目指す方向性が違うようだ。

アフタートークできいた感じだと、もともと言葉の音韻に注目して意味にこだわらない作品を作っていたそうだが、今作では演者にキャラクターを割り振って、11年前に新宿で自殺したノラという女性の物語を追いかける。目撃者のホストとその客、ノラの姉、幼馴染、そして本人。それぞれの立場から何度も物語られるが、内容は毎回揺らぐ。生者と死者も混じり合う。これは語られた言葉がそのまま舞台上の現実になってしまうという演劇の約束事、一種の暴力性に対するチャレンジと考えることもできるかもしれない。

ノラの死の理由ははっきりと語られないが、こういうことなのかなと思わせるヒントはあった。アフタートークでも言ってたが、観客を信頼するというスタンスらしいのだ。決して無理強いをするのではなく伝わることと伝わらないことの線引きを周到に考えている様子だ。今回はまだまだ荒削りに感じたが今後が楽しみだ。

言うまでもないが音楽がいい。言葉が意味を失って音になる瞬間が何度かあって、気持ちよかった。

作、演出、音楽:額田大志/吉祥寺シアター/自由席4500円/2025-01-18 18:00/★★

出演:ermhoi、薬師寺典子、佐山和泉、矢野昌幸、長沼航、原田つむぎ、(演奏)細井徳太郎、額田大志、渡健人