スヌーヌー『海まで100年』

海まで100年

「静かな時間。今ここには誰もいない・の・ではないかと思う」という語りからはじまる3人の登場人物の朝の心象風景が語られる。彼らは横浜市鶴見区大黒町の物流センターに派遣社員として働いているという共通点がある(ちょうどそのあたりを通って劇場にたどりついたので奇遇な気がした)。彼らの物語るのは実際に起きたことではなく頭のなかで想像してみたこと、ひょっとするとこれから起きるかもしれないこと、そして決して起きないだろうことだ。

3人目の登戸さんのパートは100年後の福島第一原発跡地にヒッチハイクでいくエピソードでちょっと唐突感があった。前のパートでもっと振れてテーマを明確にした方がよかったかもしれない。

いやあ、世界的にやばいことが目白押しで起きているせいで、福島もことはすっかり忘れてしまっていた。廃炉にはまだ数十年かかる予定だし、決して忘れていいことではない。だが、まずこれから人類は戦争、気候変動の危機やトランプという歩く災厄をやり過ごさなくてはいけない。廃炉やそれらが終わったあとの100年後の福島の海は遠いかすかな希望なのかもしれないがむしろ力強く生き残る意志のようにも感じられた。

作・演出:笠木泉/象の鼻テラス/自由席2800円/2024-12-14 19:00/★★

出演:渡辺梓、鳥島明、橋本和加子