イキウメ『人魂を届けに』
森の最奥の家が舞台。そこの主人山鳥は、森で迷ってる人たちを救って自分の家に住まわせており。彼らからママと呼ばれ共同生活を送っていた。そこに八雲という刑務官が奇妙な届け物をもってたずねてくる。届け物はかつてその家に住み街に戻ってからテロを起こし処刑された男からでてきた黒い物体だ。それはまわりの人の心に語りかけてきて人魂としかいいようがないものだった。処刑された人以外にも街に戻ってからテロ的な行為をする人たちがいて、疑念を持った公安警察もやってくる・・・・・・。
主軸になるのは刑務官八雲の家族の物語だ。いつものイキウメに比べるとストーリー展開はシンプルだけのそこを補うように各場面が研ぎ澄まされている。不思議に全体のストーリーから切り離されている冒頭の魂を買う話、そしてコンサート会場の惨劇の場面二は、息をのまされた。
表だっては語られなかったけど、森という場所は両義的だ。疲れ、病んだ人をいやしてくれもするが、街の人のつながりから切り離され、自然が根源的にもつダークなパワーを注ぎ込まれもする。それはおそらく、そういうものだとしかいいようがないことなのだ。ラストシーンにはそういう明と暗をあわせて飲み込むような含みを感じた。
作・演出:前川知大/シアタートラム/指定席6000円/2023-05-20 18:00/★★★
出演:浜田信也、安井順平、盛隆二、森下創、大窪人衛、藤原季節、篠井英介