ジエン社番外公演『わたしたちはできない、をする。』

わたしたちはできない、をする。

配布されたリーフレットによると、主宰の山本健介さんは去年の半年間金銭的理由で演劇ができずまったく別の賃労働をしていたそうだ。今回の公演の形態はその「できない」から生まれたもので、「演劇ができないのなら、演劇で、演劇ができない、という事をしてみたかった」という通り、「脚本を書いて言葉を固定化させたり、配役や段取りをしっかり決めることはしない」というある意味制約の上に作られている。

そして、当然テーマも「できない」で、いろいろなことができない人たちが互助のため集まる「できない園」という場所が舞台。人の名前を覚えられなかったり、靴紐が結べなかったり、ちゃんと怒ることができないといったカジュアルな「できない」(ハードな disability は対象外のようだ)をかかえた人たちが集団で生活をしている。大きなストーリーはなくて、彼らの「できない」という日常をスケッチで繰り返して変奏していく。

かなりの部分が俳優の自発性とランダム性に委ねられている。そうでなくてもひとつの役を多くの俳優が演じるため、場面の意図が伝わりにくかった。まあ、今回の作品は完成度とか完璧さというものから意図的に遠ざかろうとしているものなので、そこは求めるべきところじゃないとは思うが、参加した俳優たちや観客のためにはもう少しディレクションの手綱をしめたほうがよかった気もする。

今回は新しい試みというよりかは、できないので、やむをえずできることをしたという側面を強く感じた。すばらしい方法論と構築力をもっている人が、「演劇ができない」状態であることが、理不尽で、もったいなさすぎる。どうにかならないものだろうか?

構成・演出:山本健介/神奈川県立青少年センター スタジオHIKARI/自由席2500円/2020-02-15 17:00/★

参加:荒田幸紀、井澤佳奈、梅永あん、梅津佐知、草薙彩那、小林耕平、小林駿、こばやし帝国、佐藤紬衣、新海有己、中條玲、中村愛香、土生野乃花、藤家矢麻刀、松浦みる、渡邉素弘、(本番不参加:池田衣穂、大城美天季、春原愛良、関彩葉、波多野伶奈、林田真依、瞳)