岡崎藝術座『ニオノウミにて』

ニオノウミにて

詩的なモノローグを重ねてゆくこれまでの岡崎藝術座とは異なる新機軸に挑戦している。それが何かというと「能」だ。

難民的な境遇で日本にいる外国人男性が夜湖で釣りをしていると琵琶(実際は琵琶の画像が写ったタブレットに木の枠と柄がとりつけられたもの)を拾う。すると女があらわれ漁師の祖父(ジジー)と暮らす身の上を語り、この湖に移入され固有種を駆逐して繁殖しているブルーギルの話をする。それは「天皇」が海外から連れ帰ったもので。今ではそのことを血の涙を流して後悔しているのだとという。女は「島」にいって遊びましょう、と男を誘い、男、女、ジジー(声だけ)の三人は舟で島へとたどり着く・・・・・・。

予備知識なしでみたので、直後はどう意味づけすればいいのかわからない部分があったが、あとから確認したらすべてみたそのままだった。舞台となっているのは琵琶湖(ニオノウミというのは琵琶湖の別称)で、実際ブルーギルの繁殖が問題になっていて、当時の皇太子、今の明仁上皇がアメリカから持ち帰ったものに痰を発しているというのも実話だった。

この物語や演出も能みたいだなと思ったのは正解で、琵琶湖に浮かぶ島、「竹生島」という名前がついた能がベースになっている。オリジナルはある廷臣が女と老人にあって竹生島にわたるというストーリーだが、ここでは外国人男性に置き換えられてブルーギルをめぐる皮肉な物語をきわだたせている。

全体しては現代の琵琶湖にまつわるあれやこれやを取り入れて、裏観光案内になっていた。タブレットを使った琵琶、三線、三味線のギミックもおもしろかったし。遊びましょうといって実際UNOをプレイするのも笑えた。

作・演出:神里雄大/STスポット/自由席PT2750円/2020-01-18 19:00/★★

出演:浦田すみれ、重実紗果、嶋田好孝、(声)西田範次