宮崎企画『つかの間の道』

今年初観劇。

三組の人々のある一日を描いている。特に大きな出来事が起きるわけではないが、それぞれ人の同一性が揺らぐ(例えば連絡が取れなくなった友人と瓜二つの別人と会って行動を共にするなど)ような思いを感じて、そのことで少しだけ癒される。テーマが保坂和志の小説に重なるように思えた。

作・演出の吉田さん単独のアフタートークもおもしろかった。戯曲や小道具の配置を含めた演出のディテールがすべて意図されていただけでなく言語化できていることに驚かされた。これならなんとなくの感覚ではなく明確に各プランの成否が判断できそうだ。もうひとつ、最初2人の人物が毛布にくるまって寝ているとか対称性には気がつくけど、それと同じくらい非対称性が組み込まれているということに気がついた。歩き回る2組の裏には動かない1組がいる。これも意図的にやってる気がする。

見終わった直後登場する場所のひとつサンシャインの隣の東池袋中央公園に行ってみたが、サンシャインにはさんざんきているはずなのにまったく記憶になくて驚いた。今までのぼくの時間の流れには存在してなくて、この芝居を見たことで別の流れに入り込んだのかもしれない。そんな空想を楽しんだ。

作・演出:宮﨑玲奈/アトリエ春風舎/自由席2000円/2020-01-13 14:00/★★★

出演:木崎友紀子、立蔵葉子、石渡愛、黒澤多生、西風生子、南風盛もえ、藤家矢麻刀