モメラス『青い鳥 完全版』
劇場に着くまで、タイトルだけ借りた別作品だと思っていたが、メーテルリンクの有名な童話劇そのものの上演だった。チルチルとミチルの兄妹が最後に自宅で幸せの象徴の青い鳥を見つけるということ以外、実はくはなにも知らなかったことに気づいた。
『青い鳥』の主要なテーマのひとつに死があるようなのだ。メーテルリンクは死を単純に恐れたり、戦うべき敵とみなすのではなく、生と対等にニュートラルに描こうとしている。今回の上演では、特にその点を意識して戯曲の抜粋や順序の変更が行われている。
白い枠と、スカーフ類だけのミニマルな小道具で、照明を超絶的に駆使した演出だった。照明さん(中山奈美さんとクレジットされている)に拍手をおくりたい。かなり長く感じられた濃密な暗闇と静寂もよかった。
ひとつ尋ねてみたい疑問は、チルチルの役を3人でバトンタッチしていくようにした意図だ。最初、精神的な成長を表現しているかと思ったが、一周してしまった。
安藤真理さんは相変わらず柔らかい雰囲気がよかったし、吉田庸さんの場が引き締まる声もよかった。井神沙恵さんのおばあさん、おじいさん役が意外にはまっていて、けっこう器用な人だと思った。
これはこれでおもしろかったけど、やはりオリジナル作品がみたい。秋公演が楽しみだ。
作:メーテルリンク(訳:堀口大学)、演出:松村翔子/STスポット/自由席2500円/2018-06-22 20:00/★★
出演:安藤真理、井神沙恵、上蓑佳代、海津忠、黒川武彦、中野志保美、吉田庸、和田華子