城山羊の会『自己紹介読本』
初対面でお互いに自己紹介し合うというのは演劇でとても重宝され多用されるシチュエーションだ。この作品は唐突な自己紹介からはじまり、玉突き的に紹介が連鎖していくという、そのことをパロディー化したような構成になっている。
ミサオが公園のベンチで誰かを待っていると、突然増淵という見知らぬ男が自己紹介をしてきて、そこにミサオの待ち人、友だちのユキとそのカレシであるカワガリがやってくる。さらに増淵の勤め先の後輩曽根がやってきて、曽根が増淵に引き合わせようと思っていた柏木夫妻があらわれる。柏木は曽根から「先生」とよばれるがなかなか何の先生か明かされない。
見知らぬもの同士がひょんなことから知り合いになって新たな関係を築いてゆくといういってみればヒューマンな話なんだけど、舞台に漂うのはいたたまれない空気と赤裸々な欲望。起きるべきことがなかなか起きないじりじりした緊張感のなか物語は進行する。城山羊にしてはおとなしめな展開だけど最後に爆発する。にやにや笑いが残る後味のいい爆発だった。
作・演出:山内ケンジ/小劇場B1/自由席3500円/2016-12-09 19:30/★★★
出演:富田真喜、岡部たかし、松澤匠、初音映莉子、浅井浩介、岩谷健司、岩本えり