岡崎藝術座『イスラ!イスラ!イスラ!』
プリミティヴで奇怪な面をつけた俳優5人がひとりずつ舞台にあらわれ全員揃ったところで、一斉に足を踏み鳴らし、面の裏からどこから出しているかわからない奇妙な音を発し民族音楽のセッションみたいになる。それが収まるとともに突然一人が朗々と語り始める。
ある島についての物語(isla というのはスペイン語で島という意味だ)。島の「王」の島民への演説というスタイルをとっている。5人が順々に王になりきって語り続ける。100分くらいの芝居なので一人20分くらいほぼ休みなく話し続けることになる。しかも通常の話し言葉ではなく書き言葉に近い独特の比喩が散りばめられた難度の高い言葉だ。俳優陣の顔は面に隠れて見えなかったが声がそれぞれ特徴的でその難しい言葉をしっかり咀嚼して発声していた。
語られるのは、王が島に漂着してから、彼が島に言葉や文明をもたらし、長い年月の果てに外部からやってきた資本の力で島が変貌していくまでの歴史だ。南米のマジックリアリズム小説みたいに奇妙でちょっと残酷な出来事が次々起こる。王は最後にはまるで島そのもののような存在に変化している。5人が語りを回していくのも、いわば王の魂が憑依して語っているという体なのだろう。強度の高いテキストだ。
俳優の顔は芝居のあとの挨拶の時に一瞬だけ見ることができる。どれも上気して汗をかいて一仕事を終えた満足感に溢れた顔だった。
客席はいっぱいで、こういう硬質な公演に人が集まるのは率直に嬉しい。まだまだこの社会も捨てたものではないと思わせてくれた。
作・演出:神里雄大/STスポット/自由席2800円/2016-02-05 20:00/★★★
出演:稲継美保、嶋崎朋子、武谷公雄、松村翔子、和田華子