青年団『東京ノート』
作・演出:平田オリザ/駒場アゴラ劇場/自由席3500円/2007-05-01 19:30/★★★★
出演:足立誠、根本江里子、松田弘子、山内健司、山村崇子、堀夏子、河村竜也、ひらたよーこ、辻美奈子、松井周、大竹直、大塚洋、小林智、能島瑞穂、秋山健一、川隅奈保子、小笠原康二、鈴木智香子、荻野友里、長野海
10年1昔とすると、0.9昔前の芝居を見始めたばかりの頃に、この作品をみている。そのときからたくさんの芝居をみたけど、思い返すと、この芝居を越えていたのはほとんどなかったような気がしてきた。
2014年(前回は2004年という設定だった)、ヨーロッパでは戦争が壮絶を極め、舞台となる小さな美術館にはフェルメールの絵が多く避難してきている。美術館のロビーにも戦争はその影を落としている。9年前と比べて、その影はよりリアルな輪郭をとっているような気がした。戦争の話がでると、誰もが「仕方ない」と薄笑いを浮かべる。
戦争とは無関係に、人々はそれぞれの問題を抱えている。中心になるのは秋山家の人々だ。故郷で年老いた両親の面倒を一手に引き受けている長女由美の上京を迎える、そのほかの兄弟たち。誰もが問題から目をそむけようとしている。そして、次男祐二の不倫に悩むその妻好恵。彼女は、若いときに絵をあきらめた由美に、自分を描いてほしいという。それは、弟の嫁としてではなく、彼女自身をしっかり見てほしいという、叫びなのだ。その叫びが届いたのか、届かないのか、二人はにらめっこをする。まるで子供のようだけど、ルールがちがっている……。
キャストは、主要な二人由美と好恵役の松田弘子、山村崇子がそのままで、長男、女性学芸員、遺産の絵を寄付する女性、その弁護士、元反戦運動家の青年も同じ俳優が演じていた。そのほか何人かは役が横滑りしている。昔も今も青年団は魅力的な俳優が多い。
劇団は数々あるけれど、一時期のテンションが保てずじり貧になっていったり、逆に商業的に成功して芝居の質が変わってしまう(はっきりいうと迎合的になってつまらなくなる)かどちらかのコースをたどってしまうことが多いけど、同じ場所で踏みとどまっているのはとても希有なことだ。ある状態のままあぐらをかいているのではなく、逆に常に変化し続けているから、同じ場所にいるようにみえるのだと思う。
前回同様、今日もまた雨が降っていた。