クリオネプロデュース『パリアッチ』

作・演出:倉持裕/スペース・ゼロ/指4500円/2005-07-16 19:00/★★★

出演:小林高鹿、瀬戸カトリーヌ、片桐仁、細見大輔、伊達暁、ぼくもとさきこ、郷本直也、野口かおる、玉置孝匡、つまみ枝豆、こぐれ修

オペラのステージ、客席を見下ろすことができるVIPルーム。プリマドンナみすず(彼女は舞台には「視線」としてしか登場しない)のヒモのような存在の自称作曲家細山は来る日も来る日もこの部屋にやってきているが、オペラを見るのにも飽きはて、やるせない時間を過ごし、観客たちが背中を向けるのにうってつけなことがこの部屋の中で起きているなんてうそぶいている。細山はいわばこの部屋の王様だ。だが彼自身は何もすることができない。

倉持裕には珍しいリアルな設定の芝居と思いきや、どうにも解明できないいくつかの謎が含まれた作品だ。細山を訪ねてくる鳥の糞にまみれた男。彼は自分が細山の落とし物であると言い、自分が誰かを教えてほしいという。それで彼は細山の兄という役柄をもらうわけだが、彼が話す兄弟の幼い頃の話の内容にリアリティーがありすぎて、その中に登場する幼なじみの女の子奈江ちゃんまでが実際窓から登場する。こうして彼らが役割を与えられたのと同様に、細山自身も実のところみすずから作曲家という役割を与えられたなんでも存在にすぎないのだが、最後の最後、みすずの視線の中で、彼はほんとうの作曲家になる、と読んでみたが、それでいいのかどうか見当もつかない。

謎だらけといいつつ、楽しさにあふれた芝居だった。特にラーメンズの片桐仁の存在感はやはりすごい。彼の一挙手一投足に見入ってしまう。いずれ生でラーメンズもみてみたい。