クリオネプロデュース『バット男』

原作:舞城王太郎、脚本:倉持裕、演出:河原雅彦/シアターサンモール/指定席4800円/2004-10-16 19:00/★★★

出演:水橋研二、持田真樹、伊藤高史、カリカ家城、新井友香、東虎之丞、木村靖司、石川浩司

バット男というのはバットマンとは縁もゆかりもないホームレス(アパートに住んでいたらしいので正確にはちがうのだが)の男のことで、いつも護身用にバットを持ち歩いているのだが、いざとなるとバットをふるうことができず、逆に襲ってくる少年たちにとりあげられて、たたかれている。なんか象徴的な話だが、バット男自身はこの物語の主役ではなく単なる狂言回しだ。

主役は大学を卒業して間もない会社員林。共にクラスメートである大賀祐介と梶原亜紗子二人のあやうい関係を見守りつつも、彼自身は何もすることができず、逆に巻き込まれることにいらついてしまう。彼はまた、バット男が少年たちに立ち向かう日がくるのを心の中で願いつつも、いためつけられるのをただ眺めている。もっとももうバット男はこの世にいないのだ。彼を殺した犯人はまだつかまっておらず凶器のバットは行方不明のままだ……。

脚本もすばらしいが、それ以上に演出がよかった。2chの書き込み風にバット男の人となりを紹介したり、逆光の使い方もいい。最後の数十本のバットの落下シーンには鳥肌がたった。今のところ今年観た中では最高の芝居だ。