2007年版極私的東京の街ランキング

東京都内の街をきわめて個人的な観点から順位付けしてみた。

ほんとうは年末の総括記事として2007年中に公開したかったのだけど、順位をつけるだけでも時間がかかってしまった。というわけで今頃カウントダウンのはじまりだ。

10位は上野・御徒町周辺。仕事帰り気分転換に、このあたりの風情にふれて、俄然好感度がアップした。町外れには意味もなく夜遅くまでパン屋が開いていて、売れ残ったサンドイッチの傍らで店員が眠りこけている。中心 部の街路に夜ごと築かれる段ボールの砦。その真ん中を古い写真の中でしか見かけないような異形の人々が通り抜ける。それを見守るように上野公園の広大な闇がひろがる。なんだか、コームダウンさせてくれる街だ。

9位は八重洲・日本橋。かつて五街道の起点であり、今でも多くの道が集結する。三越前の通りは空が高くてまるでニューヨークのダウンタウンのようだ。視線をさげれば襞のように路地が入り組んでいて、ドアの向こうにはまた別の空間が広がっている。正午の垂直な日射しを浴びていると、ここからどこにだっていくことができるような気がする。

8位は有楽町・銀座。隣の日本橋は昼の街だが、こちらは夜の街だ。といってもぼくが夜の銀座について何を知っているわけでもない。9時過ぎまで開いている本屋がいくつかあること。孤独な誘蛾灯のように客を待つ占い師たち。客引き禁止条例のせいでパントマイマーのように寡黙になった黒服たち。

7位は八王子。郊外といえば、にぎやかな通りがあったとしてもそこ一筋だけであとはさびれていたりとか、駅の周りのブロックだけが栄えているのがせいぜいなのだが、ここ八王子は、都心のように面上に街が広がっている。商店街は縦横斜めに走り、それが尽きた外側にもなだらかに街が広がる。繁華街をはずれても田舎じみることなく、都市的な街路が続く。立川に商圏を奪われて地盤沈下しているといわれるが、今のにぎわいを失わないでほしい。

6位は三鷹。何といっても南口駅前からまっすぐのびる商店街だ。覚えているのは、行列のできる鯛焼き屋、カレーのおいしい喫茶店、街外れの貸本屋。そこに別が何があるわけじゃないけど、何度みても楽しめる映画のように街並みを追うことがひとつの快楽になっている。南口コンコースに置かれていた若干不気味な「ハーモニー」という名の彫刻がずっと撤去されたままだが、ぜひ復活してほしい。

5位は国立。はじめて国立を訪れたとき、たまたま入ったレストランの隣の席に詩人と呼ばれる人が座っていた。それ以来、国立ではどの店の中にも文化が充満しているんじゃないかという勝手な幻想をいだいて、そのせいで逆に敷居が高くなってしまっている。実際、個性的な店が多いのは間違いないが、なかなか中に入って確かめる機会がなく、幻想ばかりが膨らんでゆく。

4位は新宿。好き嫌いを越えて定番の街だ。ここにくれば、愛と永遠以外のものはたいていそろうので、なんだかんだで足繁く訪れてしまう。おそらく、東京をしばらくはなれることになったら、まっさきに思い出すのは新宿のごみごみした雑踏だろう。

3位は下北沢。ぼくにとっては演劇の街だが、音楽の街だという人もいるだろうし、古着の街という人もいるだろう。人それぞれの下北沢があって、ざわざわと共鳴している。市川準の撮った『ざわざわ下北沢』という映画の中で主人公の少女が「このざわめきが消えることはないし、またひとつにまとまることだってない」といっているが、街の真ん真ん中に巨大な道路を通す計画がもちあがっていて、そのざわざわがピンチに瀕している。がんばれ、ざわざわ。

2位は渋谷。あふれかえる人の流れがテンションを高めてくれるアッパー系の街だ。大きくて品揃えのよかった書店ブックファーストが移転縮小して、新宿に比べると利便性が落ちてしまったが、相変わらずぼくにとってはホームタウン的な居心地のよさを感じさせてくれる街だ。

1位は吉祥寺。東京西部攻略のベースキャンプとして利用させてもらっている。さまざまなパフォーマーが集って開放的な井の頭公園、にぎやかな北口メインストリート、隠れ家的な東急裏、そこにヨドバシカメラが加わって、向かうところ敵なしの全方位的な街だ。

今年もたくさんの街を訪れることになるだろう。それぞれの街の新しい魅力がみつけられればいいなと思う。

というような感じで、今年もよろしくお願いします。