冠詞
フランス語の冠詞には、不定冠詞、定冠詞、部分冠詞の3つがあります。不定冠詞は英語でいうと"a"で、一般的なものや、不特定のものにつきます。定冠詞は英語でいうと"the"で、特定されているものや一つしかないもの、ぼんやりと全体をさす場合などにつきます。この辺は英語と同じなので詳しく説明しません。
部分冠詞は英語にはないものです。英語の名詞に、“countable"と"uncountable"の区別があったのを覚えているでしょうか。一つ、二つと数えられる名詞と、水とか情熱とかのように数えられない名詞です。この数えられない名詞の方に部分冠詞はつきます。意味としては「いくらかの」というような感じです。
それでは、これら3つの冠詞が名詞の「数」、「性」によってどう変わるかを表で示しましょう。なお、冠詞に関しては複数は男女同形なので一つにまとめます。
不定冠詞 |
定冠詞 |
部分冠詞 |
例えば、(ある一冊の)本は"un livre"で、(その)椅子は"la chaise”、(いくらかの)コーヒーは(男性名詞なので)“du café“です。
いうまでもありませんが、数えられない名詞全てに部分冠詞がつくわけではなく、あくまでも「部分」を示す場合にのみつきます。
前者は音楽というものの中の一部を聴いていたにすぎないので、部分冠詞がつき、後者は一般に音楽というもの(全体)が好きだといっているので定冠詞です。
なお、名詞を覚えるときは、頭に不定冠詞をつけて覚えると、いっしょに性まで暗記できて便利です。(定冠詞じゃだめなんです。なぜだめかはすぐ下で説明しています)。
エリジョン
エリジョン”élision"というのは母音を省略することを指します。英語でいうと、“I am"を"I’m"と略すようなものです。ただし、英語では略しても略さなくてもどちらでもよく、むしろ略さない方が丁寧であるともいえますが、フランス語では 略すべきところでは必ず略さなければなりません。
エリジョンはある特定の単語のあとに、母音または無声のhではじまる単語があらわれるときに発生します。ある特定の単語というのは、上で紹介した定冠詞や部分冠詞、このほか否定の"ne"や疑問の"que"などです。
ここでは定冠詞と部分冠詞のエリジョンをとりあげます。
“le”, “la"はエリジョンされると"l’ “になり、“du”、“de la"は"de l’ “になります。
「(その)オレンジ」は"l’orange"で、「(いくらかの)水」は"de l’eau"です。
エリジョンされると定冠詞、部分冠詞とも男女問わず同じ形になってしまいます。名詞の性の暗記に使えない理由はそれです。
なお、エリジョンとは異なりますが"de des(複数の不定冠詞)“は"des"が完全に省略されて、“de"になります。