平田オリザ『演技と演出』

演技と演出 (講談社現代新書)

よくみにいく劇団「青年団」の主宰である平田オリザ氏の演技・演出論。直前に読んだ本がウィトゲンシュタインに関する本だったので、本書の中の演劇論的な部分を読んでいると、ウィトゲンシュタインが「言語ゲーム」について語っていたことと共通することが多いことに気がつく。

要はいかにして「リアル」を形作っていくかということで、そのための具体的な方法論が語られている。たとえば劇の流れということでいえば、観客がイメージ共有しやすいものから見せておいてだんだん難度をあげてゆくとか、間を効果的に使って観客の想像力の幅を広げることが挙げられている。演技についていうと、平田氏が俳優に求める最初の条件は「日常の様々な動作を、意識して、自由に組み合わせて、何度でも新鮮な気持ちで演じることができる」ことで、ある役柄を与えられた場合にはその役柄に見える範囲でもっとも離れた「もっとも遠いリアル」を探すことが求められる。青年団の舞台をみていて無意識に感じていたことは、実はそういうことだったのかと激しく納得した。

特に印象に残ったのは「私は、観客が、そのテーブルに座っている、もう一人の人間のように演出をしたいといつも思っています。登場人物の誰でもなく、しかし、その空間に居合わせたような感覚を観客に持ってもらいたいのです。」という言葉。

★★★