池澤夏樹『南の島のティオ』

南の島のティオ

一応童話ということになっていて、確かに設定も語り口も童話なのだけれど、むしろ大人が読んだほうがおもしろいと思う。

主人公のティオが住む南の島はとても不思議なところで、それを見たものが訪れずにはいられないような絵葉書を作るセールスマンがやってきたりとか、空中に3Dのリアルな絵を描く旅人がやってきたりとか、山のてっぺんに星が透けて見える大きな身体の怪物がいたりする。

ふつう童話というのは、大人用の小説に比べて、そこで起こる出来事がロジカルに説明されているような気がするのだけれど(不思議な出来事があってもそれはきちんと不思議な世界の論理で説明されている)、この本の中には、唐突に事件がおきるか明らかになって、それが解決しないままちゅうぶらりんという作品がいくつかあった。南の島というのはそういうところなのかもしれない。

それ以外にもちょっと背伸びしなければわからない微妙な感情がでてきたりして、やっぱり大人が読むべき本なのではないかと思ったのだった。

★★