宇野常寛『リトル・ピープルの時代』

リトル・ピープルの時代

現代が、ビッグ・ブラザーが壊死し、誰もが否応なく(小さな)父として機能してしまうリトル・ピープルの時代であるという立場から、村上春樹論でその想像力の限界を指摘して、子供向け番組ながらその限界をやすやすと乗り越えたシリーズと平成版仮面ライダーを紹介する。

ぼくは村上春樹のファンで、ほとんどの作品を読んでいるが、読みながら感じていた違和感を、この本がうまく説明してくれたような気がする。特に、主人公たちがナルシズム的なデタッチメントの状態を抜け出して、「悪」=「敵」に対抗するために「コミットメント」する際に、そのコストを「<母>的な存在」におしつけているレイプ・ファンタジィ的な構造をとっている、という指摘はかなり的を射ていて痛かった。

仮面ライダーについては、朝の子供番組なのに、不倫だの、バトルロワイヤルだのという展開になっていることに驚き。

個人的な事情で本が読めない、読もうとしても頭に入らない状況が続いたので、時間がかかってしまったが、分厚いけどとてもリーダブルな本だった。