町山智浩『トラウマ映画館』
町山さんのポッドキャスト『アメリカ映画特電』を毎回楽しみにきいている。その博識と話芸で実際にその映画をみるよりもその映画のことが深く理解できるし、しかももっと感動できるような気さえする。
本書でとりあげられているのは、公開はされたものの、あまりにも暗かったり衝撃的だったりで、その後忘れられてしまった映画25本。でも、町山さんの文章で蘇ったそれらの作品はどれもそのまま埋もれさせておくには惜しいものばかりのように思えた。このエントリーを書いている今訃報が飛び込んできたシドニー・ルメット監督の『質屋』なんて実際みてみたら生涯の一本になりそうで、こわい。
ポッドキャストではほとんど触れられなかったけど、本書の中には、町山さん自身の半生、特に両親に関するトラウマ的な出来事がいくつかさりげなく書かれている。町山さんにとって、この本で紹介されている映画はトラウマなんかじゃなく、むしろ実生活のトラウマから救い出してくれる癒しのようなものだったのではないかと、想像した。その気持ちがわかりすぎるくらいよくわかる。