海野十三『地球盗難』

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しばらく読書してなかったのでリハビリのつもりで、気軽に無料で読めるこれを選んだ。分量的にも長編というより中編に近い。

出版は戦後の1946年だが、1936年の雑誌連載が初出のようだ。まだ日中戦争も始まってないので、戦争の影は作品の中には出てこない。

矢追村という架空の村が舞台。森の中で巨大化した生物があらわれ、少年が行方不明になる事件が発生する。休暇で村を訪れていた理学士大隅は、飛行機乗りの記者佐々の助けを借りて調査のため森の中にある辻川博士という謎の科学者の屋敷に忍び込む。

奇怪な姿の異星人、ロケットによる宇宙飛行など定番のSFギミックは、この頃から一般的だったようだ。冒頭に言及されるネス湖の巨大生物ももうこの頃に伝わっていたみたいで

ラストは連載完結ののためなんとか大団円に持っていった感じで、積み残し多数だ。肝心のウラゴーゴル星人や辻川博士の目的やその後の顛末が語られないままなのはさすがにどうなんだと思う。

まあ、それを差し引いても昔のSF作品はストレートにセンス・オヴ・ワンダーを打ち出してくるのが素朴でいいなと思う。

★★