小川哲『君のクイズ』ebook

B0BH918CGW

賞金1000万円をかけたクイズ番組の一対一の決勝戦。まだ問題が一言も読まれないうちに対戦相手本庄がホタンを押し、正解してしまう。しかも回答は「ママ、クリーニング小野寺よ」というものだった。敗れた三島は納得できず、なぜ本庄が正解できたのか、その理由を探っていく。

小川哲さんは基本SF作家なのでそっちに流れていくのかと思いきやちゃんとしたミステリーだった。相手がインチキをしているという確証バイアスにとらわれず、真相にたどりついていく。これぞ知的誠実さという感じだった。

クイズと人生がオーバラップしている主人公三島の造形がすばらしい。彼はクイズという世界を内在化してそのなかで生きている。それに対する本庄はクイズを道具として扱い。自分の利益にどう生かすかを考えている。この二人の対比がおもしろい。三島は本庄のそういう姿勢を嫌悪するが、外在化してみえてくるものもあるはずで、だからこそ本庄は勝てたのだろう。だが、それはクイズじゃないというのも理解できる。

これはクイズに限らずあらゆる文化にある対立だと思う。

今回、クイズというのが知識比べではなく、駆け引きのある競技だということがわかった。ちょうどYouTubeでクイズ系の番組を見始めたところだったので興味深かった。

★★★