マイクル・Z・リューイン(石田喜彦訳)『沈黙のセールスマン』
再読のはずだが例によってまったく覚えてない。主人公の私立探偵アルバート・サムソンはもう少しおとなしい常識人かと思っていたがかなり唐突に過激な行動をするし、単なる医療事故の隠蔽か何かの地味な案件かと思っていたら二転三転して複数のとんでもない陰謀が明らかになる。
そして語り口もソフトだろうという先入観とうらはらにシャープで小気味よくてかなり正統的なハードボイルドしているのだった。主人公サムソンの愚直でストイックな職業倫理も、ハードボイルドの探偵はこうあるべきという感じで、好感が持てる。12年ぶりに会ってサムソンの調査を手伝う実の娘サムなど脇のキャラクターも魅力的だ。
後半からの展開がとにかくおもしろい。サムソンシリーズの他の作品も読んでみたくなったが邦訳はけっこう廃刊になってしまっている。原書にチャレンジしてみるのもいいかもしれない。
★★★★