アンディ・ウィアー(小野田和子訳)『プロジェクト・ヘイル・メアリー』
目が覚めるとたくさんの管や電極につながれてベッドの上に横たわっている。身体がなぜここにるのか、自分の名前も思い出せない。部屋にはほかに二つベッドがあり人が横たわっているが、どちらも死んでいて、死んでからかなりの年月がたっているようにみえる・・・・・・。このシチュエーションで先が読みたくてたまらなくなった。主人公は徐々に記憶を取り戻し自分がそこ(まあ宇宙線の中なのだが、それだけはネタバレしても大丈夫だろう)にいる理由を知ることになる。次から次へと降りかかる困難に、ある意味地味な科学の手法で解決策を見つけていくのは処女長編の『火星の人』(読んだ気がしていたがぼくは映画をみただけだった)と共通だ。
驚きを味わってほしいのでこれ以上のネタバレは書かない。まずは読めという感じだ。
最近書かれたSF大作ということでは『三体』シリーズに通じるものがあるが、あちらがヒューマニズムや人間存在を超える蝶宇宙的な世界観を提示したが、こちらは普遍的なヒューマニズムに貫かれている。スケールは小さいかもしれないが、感動は負けてない。読後感がすばらしい。