ギョルゲ・ササルマン(住谷春也訳)『方形の円 偽説・都市生成論』
36の架空の都市を題材にした短編集。といえばイタロ・カルヴィーノ『見えない都市』が思い浮かぶ。これはルーマニア出身の作家によるもの。読み終わるまで新鋭作家が『見えない都市』を下敷きにして発展系として書いたものだとばかり思い込んでいた。それにしてはオーソドックスで、『見えない都市』のポストモダン的なシュールさがないと思ったりもしたが、そういう方向に発展させたのだと思っていた。
実際はこの白品は『見えない都市』以前に書かれている。冷戦下鉄のカーテンの向こう側ということがあり西側に紹介されるのがおくれたのだ。
一番印象に残った都市はサフ・ハラフだ。イギリス人の探検家が亀裂のように細い通路しか入口のない城壁都市にたどり着く。何日もの通路の探索の果てに彼を待っていたものとは……。
★★