ギョルゲ・ササルマン(住谷春也訳)『方形の円 偽説・都市生成論』

36の架空の都市を題材にした短編集。といえばイタロ・カルヴィーノ『見えない都市』が思い浮かぶ。これはルーマニア出身の作家によるもの。読み終わるまで新鋭作家が『見えない都市』を下敷きにして発展系として書いたものだとばかり思い込んでいた。それにしてはオーソドックスで、『見えない都市』...

ケン・リュウ編(中原尚哉・他訳)『折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー』

中国系アメリカ人SF作家のケン・リュウが現代中国のSF作家7人の作品12編(とエッセイ3編)を選んで英語に訳したアンソロジー。本書はそれをさらに日本語に訳した重訳だ。そのほか、ケン・リュウによる序文と各作家の紹介がおさめられている。 率直にいって、どれもおもしろい。それも中国ならで...

クリストファー・プリースト(古沢嘉通訳)『夢幻諸島から』

舞台となる夢幻諸島(The Dream Archipelago)の位置条件は地球上のそれと矛盾するので、地球外の惑星なのかとも思うが、文花や文明の到達度は、インターネットやスマフォ隆盛の現代のわれわれと極めて近い。あり得べき異世界と考えればいいのかもしれない。 夢幻諸島のいろいろな島の地誌を紹...

イタロ・カルヴィーノ(米川良夫訳)『見えない都市』

マルコ・ポーロの口を借りて語られる55の架空の都市の物語。どの都市もあるはずのない特異な謎をもっているが、どこか似通っていて交換可能であり、(少なくとも物語の中では)実在するかもしれない都市というより都市という記号について語っているように思える。都市の物語の間にときおりはさまれる...