アルフレッド・ベスター(中村融訳)『願い星、叶い星』

願い星、叶い星 (奇想コレクション)

日本で独自に編まれた短編集。どれも粒ぞろいの作品で訳もいい。

『ゴーレム100』の作者がどんな短編を書いているのかと思って読んだが、最後の『地獄は永遠に』をのぞいてはアンドロイド、タイムトラベル、地球の終末などをテーマにしたオーソドックスなSFだった。特に『イブのいないアダム』のラストは感動的でよかった。

『地獄は永遠に』は『ゴーレム100』とよく似たシチュエーション。どちらも、何人かの仲間が定期的に会合を開いて様々な快楽をむさぼっていたが、すべてに飽きて、悪魔崇拝的なことを試す場面が発端だ。『ゴーレム100』ではそれがとんでもなく残虐な連続殺人事件の幕開きだったけど、『地獄は永遠に』で死ぬのは一人。その死の報酬として残りの五人が、それぞれ自分の望む世界を手に入れる。その世界とは……。とても残酷で手の込んだ物語だった。